王平 子均

字が読めないのが何だってんだ!

 生年不明。  

 益州・巴西郡出身。洛陽にて校尉の任を与えられ、曹操の漢中征討の軍に加わるも、その時に劉備に降り、以後蜀将として戦う。  

 第一次北伐の際に馬謖の副将として街亭に赴く。馬謖の行動を幾度か諌めたが聞き入れられず、結果馬謖は大敗。王平はわずかな兵を率いて踏みとどまり、生き残った兵を回収しつつ撤退した。  

 以後の北伐においても、敵に隙を見せず忠実に戦い、その地位を向上させる。諸葛亮が亡くなった234年の撤退戦では、独断行動を取った魏延の軍を破り、撤退時の混乱の収拾に尽力した。  

 後に漢中方面の守備を全面的に任される。244年には魏の十万の大軍を撃退する働きを見せ、その名声を周囲に知らしめた。その4年後の248年、病死した。  

 王平は若くして戦場にあったため文字の読み書きが出来なかったが、配下に読んでもらった書物の内容はしっかりと熟知していたという。



   〜翼無き英雄、穂に輝きを見る〜

 243年、諸葛亮が亡くなり十年近くが過ぎていた蜀は、その動揺を収拾し、内政に力を注いでいた。

 蜀の首都・成都郊外で診療所を開く医師・楊は、弟子の燕にある病人の下へ薬を届けてくれるよう頼む。燕が薬を携え向かった先にいたのは、老いた蜀将・王平であった。

 燕が薬を調合する中、王平は燕に自分の過去を語っていく。幼い頃に憧れていた鳥人の英雄のこと。かつていた魏では、英雄になれないと気付いたこと。

 蜀ならば、自分は憧れた英雄に近付けるかもしれない。そう思っていた王平は、しかし蜀でも様々なものを失う。親友を失い、戦友を失った。

 何のために戦ってきたのか。その疑問が、老いた王平の寿命を病という形で加速させていたのだった。燕は王平の話を聞いた後、王平に作ったものを差し出す。それはただの薬ではなく、一椀の粥。

 燕は言う。これに入っている穀物は、あなたが守ってきた大地が育んだものなのですよ、と…。



 他登場作品


・ 継軍師(偲蜀伝)

・ 桃園昇華(偲蜀伝)
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